骨盤矯正、骨盤ケアは実は・・・
こんにちは、西宮市まつむら鍼灸整骨院院長の松村です。

昨日ふとテレビを見ていたら・・・

寝るときにはくだけで、 骨盤サポートや骨盤矯正ができる骨盤スパッツ(レギンス)的なCMを見かけました。
解説を調べてみると・・・

就寝時に履くだけでスリムな美脚ケア&骨盤ケア。
就寝時の姿勢を補正・矯正、シルエットを整えます。

とのこと。
身体をよくした、痩せたい、綺麗になりたい、そう思う人たちを騙しているのは僕は本当に許せない。
ですので、今回は少し辛辣な内容になりますが、正しいことを書かせていただこうと思いました。
長文ですが、ぜひお読みいただいて今後の参考にしていただけましたら幸いです。

骨盤矯正や骨盤ケア、5つのウソ

骨盤自体、未だに動くか動かないか議論されています。
ちなみに、ご献体(ご遺体)実習で何度も試しましたが、超硬いです。
やわらかい布っきれで、いったい何ができるのでしょうか?

①骨盤を語るには、筋肉を知る必要がある

ちょっと専門的になってしまうことをお許しください。
骨盤に関係する筋肉を知らずに、骨盤ケアや骨盤矯正と謳っていいものでしょうか?
例えば最近有名な骨盤底筋。
女性なら産後のケアで知ってる人も多いかと思います。
骨盤底筋を鍛えると簡単に言いますが、骨盤底筋という筋肉の中でも、その場所によって変わってきます。
これは、後述しますが産後に出るトラブルの種類で、骨盤底筋のどこが損傷してるか判別できるのと同じです。
骨盤底筋の皮膚側なのか、それとも内臓側なのか、前側(おなか側)なのか後ろ側(背中側)なのか。
これによって、本来は全て変わってくるのです。
それらの場所によって、動かさないといけない筋肉があるんです。
例えば骨盤底筋の前なら〇〇筋・・・という具合に。
ということは、骨盤を布で締めつけたり、他者の手でぐりぐりしてもあまり意味がないんです。
この時点ですでにもうウソということがわかってしまいます。

②骨盤矯正に医学的根拠はない

有名な論文を紹介させていただきます。

■発症後1年以内の腰痛患者144名と健常者138名を対象に、骨盤の歪みを厳密に測定して腰痛との関連を調べた研究により、どのような臨床的意義においても、骨盤の非対称性(歪み)と腰痛とは関連していないことが証明されている。http://1.usa.gov/kIBHZm

これは古い論文ですが、世界中で骨盤の歪みと腰痛については研究されていまして、そのどれもが否定的です。
要するに、腰痛に骨盤矯正は意味がないと科学的に証明された論文しかないのが実情です。
また、これは研究分野だけでなく我々臨床分野でも昔から言われていることです。
たしかに見た目が骨盤あたりがゆがんでいることはあります。
しかし、それは骨盤あたりに原因があるのではなく、他に何か原因があって、骨盤あたりがゆがんで見えるのです。
ですので、骨盤の歪みというのは結果であって原因ではないのです。

③骨盤矯正では絶対に痩せない

脂肪を落としたいのなら、重要度の7〜8割ほどが食事です。
では残りは骨盤矯正かというとそうではありません。
運動です。
食事も、単に減らすのではありません。
栄養のバランスを考え脂肪が落ちやすい食事メニューに。
そして適度は運動。
これが脂肪を落とすための唯一の方法です。
骨盤をいくらいじくっても、絶対に脂肪は落ちません。

④骨盤矯正では美脚にならない

そもそも、美脚ってどんな足でしょうか?
たるんでなくて、締まるべきところが締まっていることのことではないでしょうか?
いくら細くても、関節がぼこっとでている昆虫の足みたいのだと美脚とは言えないと思います。
となると、上記のように脂肪を落とし、筋肉をつける、これしか美脚になる方法はないのです。

⑤骨盤矯正では姿勢は改善しない

もうおわかりかと思いますが、骨盤矯正で身体が変わらないので、姿勢も変わりません。
姿勢もまた、単に骨の問題ではなく筋肉の問題もあります。
身体を変えるということは、骨盤矯正に限らず「〇〇だけ」で変わるほど簡単なものではないのです。
僕たち治療家は、いつも治療の勉強をしています。
すればするほど、奥が深いです。
もし骨盤矯正ですべてが改善するというのが本当なら、世の中の治療家はとっくにみんな骨盤矯正だけで治療院をやっています。
この世にはたくさんの治療法があります。
それ自体が骨盤矯正だけでは改善しないという証明だと言えます。

※産後骨盤矯正について

出産というのは、身体に計り知れないダメージを負うものです。
例えば、日本の妊産婦死亡率は4%弱。
妊娠すると、そのハッピーな気分で医師の事前説明の中のリスクに関してしっかり聞いていなかったり、説明文書を読んでいなかったり、もしくは「まさか自分が」という思い込みから失念してしまったりしていますが(これらも産婦人科が減る要因だそうです)、100人中100人が出産に成功するというわけではないのです。
日本は出産に関してはかなり安全な国ではあるものの、それでも出産とは命がけで行うほどのものであることにかわりないのです。
我々治療院の得意分野だけに限定してお話させていただきます。

①リラキシンというホルモンについて

出産時には、骨盤の骨が動く(拡がる)ようにするため、骨と骨をつないでいる「靱帯」という硬いベルトを柔らかくする必要があります。
このホルモンによって関節がゆるゆるになるわけですが、産後も少しの間はホルモンが出続けているため、ゆるゆる状態が続いてしまいます。
こんな状況で骨盤矯正もあったものではありません。

②骨盤底筋の裂傷問題

出産時は、骨盤底筋の穴の中を通って子供が出てきます。
いくら子供の頭が小さくなるからと言っても、やはり骨盤底筋は裂傷、いわゆる肉離れのような状態になります。
裂傷がひどい場合は尿漏れや子宮脱などの産後のトラブルが起こるのですが、そのトラブルの種類によって骨盤底筋のどの部位が裂傷を起こしているのかがわかります。
その部位によって、ケア方法はかわるし、そのケアは・・・、ちょっとマニアックになってしまいますが、骨盤底筋の裂傷部位によって、内転筋という筋肉にアプローチするのか、おしりの筋肉にアプローチするのか、腹直筋にアプローチするのかなどが変わってきます。
手で骨盤いじくってどうこう、ではなく、それらの筋肉を最後まで収縮させることで骨盤底筋のケアをしていくのです。
裂傷した筋肉をすぐに使うわけにはいきません。
要するに怪我ですから。
そういう「正しいケア」ができるようになるまでは、しっかり安静にする必要があるのです。

本当の治療、本当のケアとは?

骨盤矯正のほとんどがウソであるということはおわかりいただけたかと思います。
しかしながら、

「じゃあ、どうすりゃいいの?」

ってなってしまうかと思います。
これをお読みの皆様には、ぜひ正しい情報を知っていただき、テレビやネット、我々治療院業界のウソに騙されないようにしていただければと思います。

身体のゆがみを見る方法

百聞は一見にしかず、ですね。
当院のホームページの写真撮影時のモデルさん(当院の患者さま)の写真を見てみましょう。

バレリーナで姿勢良いですし、当院で治療もしているのでかなりゆがみ自体はマシですが、正中に赤い線をひくとわかりますが、下半身に正中を合わせたら、鼻に正中線が通っていません。
右手のほうが左手よりも下になっています。
どこかに原因があって、このようにゆがむのです。
そしてその原因は骨盤ではありません。
骨盤も結果でしかありません。
ちなみにこの撮影の日に実際に治療しましたが、足首を整えました。
すると、

このように整いました。
左右対称だけを見るわけではありませんし、左右対称にしても本当はもっと細かく見る必要があるのですが、そこは複雑すぎるので割愛させていただきますが、まずは左右の対称をそろえることで、ゆがんだように見える骨盤もまっすぐになるのです。

自分でゆがみを取る方法

①お風呂につかる

ゆっくりお風呂につかって、身体を温めることで筋肉がゆるみます。
それによって身体のゆがみを取ることができます。

②寝る

睡眠不足は身体をゆがませてしまいます。
毎日理想通りの睡眠時間を確保するということは、このご時世では難しいかもしれません。
しかしながら、毎日寝不足の状態では身体によくないのも事実です。
仕事を終えて帰ってきて、読書やゲームなどのちょっとの趣味の時間をたまには減らして早めに寝るようにしてみてください。それだけでも身体は回復します。

③家の掃除、整理整頓をする

「は?」

そう思われるかもしれません。
汚いほうが好き、落ち着く、という人は少数です。
ほとんどの場合が、綺麗で整理整頓された空間のほうが落ち着きます。
実は、このときに身体の筋肉はゆるんでいるのです。
逆に、もし汚い場所や散らかった空間にいると、人は緊張状態になるので筋肉もこわばり、身体をゆがめてしまうのです。
お子様がおられる人は、お子様に「お片付け」「掃除」を躾として教えるかと思います。
実はこれは健康にもつながるのです。

本当の治療とは

自分でできるケアには、残念ながら限界があります。
そして、人の身体は、職場環境、ストレス、昔の怪我など様々な原因が元で放置しておくとゆがんでしまうのです。
お仕事を頑張っていると、ストレスも多くなります。
子供って、骨が成長段階なのでレントゲンも写りにくい上に、捻挫の基本的な治療は固定になってしまうので、小さい頃に捻挫をした人は治る前に動き回ってしたかもしれません。
でも、仕事は休みわけにはいきませんし、子供の頃なんてすぐに動きたいものです。
あれもこれも身体に悪いと言っていたら、何もできなくなってしまいます。
仕事も頑張って、スポーツや趣味にも没頭したい。
それは当たり前の欲求ですし、僕は積極的にするべきだとも思っています。
そういう生活をお守りさせていただくのが、我々治療家だとも思っています。
だからこそ、我々治療家は日々精進して治療に励まないといけないとも思っています。
しかし、こんなことを言ってしまうと誤解を招きかねないのですが、実は我々治療家が身体を治しているわけではないのです。

身体は治りたがっている

実は身体というのは、悪い状態になっていてもなんとか良い状態に戻そうと頑張っています。
でも、何か原因があって戻らずにいるのです。
我々治療家は、その原因を取り除き、身体が治っていこうとするのを助けるのです。
その原因は人それぞれです。
足首が原因の人もいれば、手首が原因の人もいます。
もちろん、複合された原因であることも多いです。
それらを見つけだし、整えることで身体は自動的に良くなっていくのです。

患者さまの協力が不可欠です

身体のゆがみを取ることは、本当に一瞬でできます。
しかし、良い状態をキープするのが難しいのです。
実は、身体が悪くなってしまう原因の中に、職場のちょっとした環境や動作の癖があります。
例えばデスクの足元に置いてあるものを移動させるとか、キーボードの位置を変えるとか、そんなことでも変わります。
しかしながら、我々治療家が患者さまの会社にまでついていって、「これはここ!」とか、「キーボードはこっち!」とはできません。
ですので、我々がアドバイスさせていただいた、簡単に変えられることを患者さまご自身で実践していただく必要があるのです。

このように、治療家と患者さまとの協力体制で治していくことが本当の治療なのです。

最後に

長文をここまでお読みいただきありがとうございます。
骨盤矯正系の情報は、そのほとんどが間違っており、僕はそれを目にする度に「騙されて欲しくないな〜」と思ってしまいます。
よく、「正論は人を傷つける」と言われます。
今回書かせていただいたことは、まんま正論です。
だから、もしかすると気分を害する人もいるかもしれません。
しかし、それでもなお治療家として、正しいことを知っていただき、マスコミやネットの情報に翻弄されず、健康を維持してほしいと思うのです。
少しでもこの記事がお役に立つことができれば幸いです。

どこに行っても改善しない、そんな症状の方はぜひ一度当院までご相談ください。

(柔道整復師・鍼灸師 松村正隆 監修)

インターネット予約はこちら
電話予約はこちら