腰のヘルニア(腰椎椎間板ヘルニア)は手術しないと治らないの?

こんにちは、西宮のまつむら鍼灸整骨院の松村です。
今回は、腰のヘルニア(腰椎椎間板ヘルニア)について、患者さんによく相談されることについて書かせていただきたいと思います。

腰のヘルニア(腰椎椎間板ヘルニア)の場合、腰の痛みや、左右どちらかのお尻から太もも、時には足先までしびれが出るような症状が出ることが多いとされております。
当院に受診された患者さんも、問診の時に
「整形外科に行ったら、レントゲンを撮られて、背骨と背骨の間が狭くなってる。ヘルニアかもしれません」
とか、
「実際にMRIを撮って腰椎椎間板ヘルニアと診断されてしまった」
と言われる方がたくさん来られます。
痛みで辛いのに、「ヘルニアは手術しないと治らない」とか「腰に爆弾を抱えてると思ってください」とか「なるべく負担のかからないようにしてください」などを言われ、余計に不安になってしまうことも多いと思います。
まず知っていただきたいことがあるのです。

ヘルニアは腰痛やしびれの原因ではない

まずは国際的な論文を紹介させていただきます。

21~80歳までの腰痛未経験者52名を対象にCATスキャンで腰部椎間板を分析した結果、年齢に関わらず35.4%に何らかの異常が検出され、40歳未満の19.5%に、40歳以上の26.9%に無症候性椎間板ヘルニアが確認。http://1.usa.gov/mBTclS

となっております。
そう、腰痛等がない方の中にも、ヘルニアの方はいるのです。
次に紹介させていただくのは、上記と同じ意味合いの論文ですが、国際腰椎学会という学会で、ボルボ賞を受賞した有名な論文です。

椎間板ヘルニアと診断された強い腰下肢痛を訴える患者46名と、年齢、性別、職業などを一致させた健常者46名の腰部椎間板をMRIで比較した結果、健常者の76%に椎間板ヘルニアが、85%に椎間板変性が確認された。http://1.usa.gov/iN3oKG

と発表されております。
これが世界基準ですので、ヘルニアだからと言って何も恐れる必要はないのです。

ヘルニアの原因は遺伝子。

これもまずは世界的な論文を紹介させていただきます。

男性の一卵性双生児115組を対象にMRIで椎間板変性を促進させる危険因子を調査した結果、椎間板変性は仕事やレジャーによる身体的負担、車の運転、喫煙習慣といった物理的因子より、遺伝的因子の影響を強く受けていることが判明。
http://1.usa.gov/kWg7Iw

これも国際腰椎学会でボルボ賞を受賞した有名な論文です。
ですので、運動等が原因でヘルニアになるわけではないので、安心して日常生活を普通に送っていただいて大丈夫です。

「でも、医者にはヘルニアって言われたし、手術じゃないと治らないって言われた。手術ってどうなの?今すぐ受けないとダメ?」

すでに国際的な論文ではそれらも判明しております。

椎間板ヘルニアに対する手術に関する論文81件を分析した結果次の6点が判明した。(1)椎間板ヘルニアが確認された2ヶ月間の保存療法に反応しない坐骨神経痛患者はそのまま保存療法を続けるよりラブ法を実施した方が早く改善する。
(2)4年~10年の長期成績という観点から見るとラブ法と保存療法の効果に差は認められない。
(3)顕微鏡下髄核摘出術と経皮的髄核摘出術が腰痛に効果があるという証拠はない。
(4)経皮的髄核摘出術はラブ法より再手術率が高い。
(5)椎間板摘出術は比較的安全な治療法とされているが、これまで考えられていた以上に再手術を必要とする例が多い。
(6)椎間板ヘルニアに対する手術成績は、心理社会的因子の影響を強く受けている。
http://1.usa.gov/q1HPOA

腰痛診療ガイドラインの勧告に従った保存療法(手術じゃない治療)の場合は2ヶ月ではなくて2年の猶予期間があります。
要するに椎間板ヘルニアは日にち薬が有効だということです。
また、手術を受けた患者の5~50%は症状がまったく変わらないか、あるいはさらに悪化することが判明しています。
最近の腰痛診療ガイドラインでは手術はガイドラインに従った保存療法を2年間行なっても改善しないか、激しい痛みが続く患者に限るべきと勧告しています。

もし2年経ってもよくならない場合や、激しい痛みがあって手術をする場合、どんな手術がいいの?

坐骨神経痛を訴える椎間板ヘルニア患者60名を対象に、ラブ法群と顕微鏡下髄核摘出術群の術後成績を1年間追跡したRCT(ランダム化比較試験)によると、術中の出血量、合併症、入院日数、欠勤日数、改善率など、いずれも両群の間に差は認められない。http://1.usa.gov/p43qmF
腰下肢痛を訴える椎間板ヘルニア患者52名を対象に、ラブ法群とキモパパイン注入群の術後成績を1年間追跡したRCT(ランダム化比較試験)によると、ラブ法群は85%でキモパパイン群は46%の改善率だった。腰痛の改善率も特にラブ法群が優れていた。http://1.usa.gov/ofd8E8

現段階では、昔から行われている「ラブ法」という方法が一番良いようです。
しかし

坐骨神経痛を訴える椎間板ヘルニア患者126名を対象に、保存療法群とラブ法群の治療成績を10年間追跡したRCT(ランダム化比較試験)によると、1年目まではラブ法群が優れていたが4年目以降は両群間に差はなくなっていた。長期成績は両群とも同じ。http://1.usa.gov/pbjVPJ

とあるように、そのラブ法でさえも、長期的に見ると保存療法と差はないのです。
よほどの激痛でまったく動くこともままならない等で、仕事等に相当差し障りがある場合以外は選択しなくても良いのではと思います。

動いていいの?

はい、大丈夫です。

健常者41名を対象に腰部椎間板を5年間にわたってMRIで追跡調査した結果、物理的負荷(重量物の挙上や運搬・腰の回転や屈曲等)という従来の危険因子は椎間板変性とは無関係で、腰痛発症率はむしろ椎間板変性のある方が低かった。http://1.usa.gov/178sVnE

とあるように、腰に負担をかけるということと、椎間板がおかしくなるということは関係がないということがわかっております。
別に恐ろしく高負荷なトレーニングをしろとは言いませんが、日常生活程度の動きは、恐れることなく積極的にしていくべきでしょう。

まとめ

もし病院で「腰椎椎間板ヘルニア」と診断されても、決して慌てないでください。
また、絶対に「安静に」という指導には従わないでください。
国際的には、今まで紹介させていただいたようなことになっているわけですので、痛すぎて全く動くこともできない(まあそんな場合だと普通に受診してはいないですよね)というわけでもないのに、手術を勧めてくるのは勉強不足ですので、受診される病院を変えた方がいいかと思います。
また、最近当院に受診される患者さんに言われることで多いのが、「レントゲン撮ってもらってヘルニアだと言われた」というものです。
こちらが「MRIは撮りませんでしたか?」と尋ねても、「絶対撮っていない」とのこと。
ヘルニアかどうかはレントゲンでは診断できませんので、レントゲンだけでそのようなことを言う病院も相当危険ですので、転院をおすすめ致します。
また、腰が痛い、おしりや太ももがだるい、しびれる、足先まで痺れるという状態が長く続いている場合、脊椎マニピュレーション(整体)、鍼灸治療がお勧めですし、腰痛診療ガイドラインでも推奨されております。
一度それらを試してみられてはいかがでしょう。
活路を見いだせる可能性が高いと思います!